諏訪湖のドローンによる害獣(カワウ)追い払い実験 結果が公表、課題も明確に

長野県諏訪地域振興局農政課(以下同課)が8月28日、同県内諏訪湖にて実施した無人航空機(ドローン)によるカワウの追い払い実験の結果をまとめたものがこの度公表されました
一定の効果が見込めたと同時に、ドローンの追い払い活用に向けた課題も明確となってきましたのでご紹介したいと思います

ドローンによるカワウ追い払い実験の内容

実験では魚食性鳥類であるカワウの食害対策の可能性を検証するために、町漕艇場沖の防波堤ブロック、および砥川河口にて、ドローンを接近させることによる追い払いを行ったとのこと。その際、砥川河口においては大音量を発するスピーカーを搭載し、飛行音に加えて轟音による威嚇も実験したとのことです

いわゆるドローンを活用した「害獣対策」の実験ですが、現状で主に使われる手段は「音」と「光」の2種類であることが多く、今回は「音」による実験を行ったという形になります

まとめによりますと、大音量スピーカーを搭載したドローンが接近した砥川河口での実験においては、ドローンが15メートルにまで接近した際、カワウが一斉に飛び立つ様子が確認できたとしています。まとまって逃げた20羽ほどのカワウですが、次第にバラバラに着水。これをさらに追いかけたところ、今度は水中にもぐって逃げたとのことです
なお、同じエリアにいたアオサギについても同様に逃げる姿が見られたとのことです

一方、スピーカーを搭載せずに実験を行った防波堤ブロックでは、飛んで逃げるカワウもいたものの水中にもぐってやり過ごす個体も確認できたとしています

実験によって見えたドローンによる害獣対策(追い払い)の課題

実験当日は雨が降ったために一部の実験が行えなかったという事実がありました。このように、まず大前提としてドローンの飛行は風雨といった気象条件に左右されること、また、飛行時間が20分程度と短いこと、さらに対象となる害獣を目的の方向へ誘導することが困難であることなどを課題とし、活用へ向けてはただ飛ばすだけではない工夫も必要であるとまとめられています

同課では、ドローンの活用は追い払い作業の省力化にはつながるもののドローン単体での作業には限界もあり、船による追い払いと並行して行っていく必要があるとしてまとめています

まとめ

全天候型のドローンは存在するものの、自治体での導入はコストの面などから難しく民生用のドローンを使用されることが多いと思います
また、空撮や点検等と違い、逃げる動物を目的の方向へ追い込むには自動航行では難しく、その場その場で瞬時に機体をコントロールする必要があり、ドローンを操作するパイロットにも一定の技量が求められるものでもあると感じます

今回のまとめのように既存の技術と併用しての活用を考えていくというのは非常に良い方向性だと思います。それと同時に、今後ゼロスタートでこうした取り組みを始めていく方は、まず要件をきっちりと定義し、それに必要となる機体の選定やパイロットの育成を行っていくことが、害獣対策におけるドローンの活用には必要となってくるのではないかと思います

※余談ですが、カワウはともかくとして哺乳類などでは「音」や「光」の刺激になれてしまうケースも多くあります。音を変えたり発光パターンを変えたりするという最低限の対策はとられているものの、それらの細かな変化にすら動物は対応してしまうことも考えられます
そのため追い払いは抜本的な解決にはならないことも多いですので、少し残酷だと感じる方もいるかもしれませんが「駆除」と合わせて考えていくことが今後のドローンによる害獣対策には必要なのではないかと感じます

関連サイト
Nagano Nippo Web(http://www.nagano-np.co.jp/articles/38904