ドローンの山岳救助システムが実証実験に初成功 来年実用化を目指す【KDDI】

去る2018年11月15日、KDDI株式会社(以下KDDI)が富士山において遭難者救助を目的とした山岳救助システムの実証実験に成功したことを発表したことで話題となっています

ドローン 山岳救助
画像出典:KDDI

ドローンによる山岳救助とは

実験は2018年10月25日、富士山の5合目にて行われました
実験は、御殿場市、株式会社ヤマップ、株式会社ウェザーニューズの協力のもとに実施されたもので以下のような内容となっています

  1. 登山者は位置情報通知デバイスを持って入山する
  2. 登山者の知人(家族等)は位置情報通知デバイスによって位置を把握できる。位置情報から「遭難」を把握したらドローンにより捜索を依頼する
  3. 通報を受けたドローンは位置情報と気象予測システムをもとに、飛行可否の判断及び飛行経路の決定を行う
  4. ドローンが自動航行によって現場へ急行する
  5. 遭難者を発見したら状況を確認して戻る

といったような流れになります

ドローンによる山岳救助を支える技術的要素

新たな高精細気象予測システム

この運用を支える要素として大きな役割を担っているのが、ウェザーニューズが提供している高精細気象予測システムです
KDDIとの協業によって、全国3,000箇所に設置されている気象観測装置「ソラテナ」の情報に加えて、ウェザーニューズが独自に全国10,000か所から収集した気象データを併せて活用するシステムとなっています
これによって、気象情報業界初となる250mメッシュかつ高度10m単位での精細な情報を提供し、ドローンを使用する事業者をサポートすることが可能となっています。このシステムは山岳救助のみならず、KDDIが構築する「スマートドローンプラットフォーム」において、発表と同日の2018年11月15日より利用可能となっています

プロドローン製山岳ドローン

もう一つの技術的要素が、プロドローンが開発した高性能山岳用ドローンです

山岳救助ドローン
画像出典:KDDI

そのスペックは以下の通り

  • 最大運用標高:6,000m
  • 耐風性能:風速18m
  • 防水:IP55相当
  • 可搬性:折りたたみ可
  • 低温耐性:マイナス20°(実証実験による)

となっており、過酷な山の環境でも出来る限り運用できるように作られていることが分かります。冬山の環境に耐えうるよう、バッテリーは本体内に収納されるような作りとなっており、低温によるフライト不可はもちろんのこと、低電圧を起こさないような配慮もなされています

実運用はいつから?

同システムは2019年の山開き以降、夏場の本格シーズンに合わせて商用サービスを開始できるように準備が進められています
遭難の原因で最も多いのが、登山ルートから外れてしまう「迷い込み」であり、そうした際には遭難者の位置情報の予測がつきづらいだめ、こうした位置情報通知システムを備えて入山することで、遭難地点の早期特定に役立つことが予想されます
遭難地点が判明した際に効果的なのはヘリコプターによる山岳救助となりますが、ヘリによる捜索はコストが高くついてしまうことに加えてリスクも高くなってしまいます。また地上からの救助では人的・時間的に多大な労力が必要であることに加えて、2次遭難というリスクも存在します

こうした問題に対応するためにも、低コストでかつ迅速に遭難地点の特定・状況確認が行えるドローン山岳救助は大きなメリットがあると期待されています

世界遺産認定以降、富士山の人気は再び高まり入山者も増えています。外国人観光客も多いため中にはルート説明が分からず道を外れてしまうこともあるでしょう。本サービスが導入されることで、より一層安全に登山が行えるようになれば良いと思いますし、これをモデルケースとして他の地域でも同様のサービスを行っていく足掛かりとなってくれることを期待しています

関連サイト
KDDI株式会社:http://www.kddi.com/
KDDIプレスリリース:https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2018/11/15/3484.html