【コラム】「Skydio R1」が対応したApple Watchからのドローン操作は日本では厳しい!?
米国を中心に発売され、その自律飛行の精度の高さから人気のSkydio社製「R1」ドローンが、この度Apple Watchからの操作に対応したとして話題になっています
それに伴ってアメリカ、カナダのApple StoreではR1の販売が開始されるようになっており、日本でも発売してくれないかなぁと期待する人も増えていくのではないかと思います
しかし
このドローンが日本で発売されたとして、ちゃんと公称通りにフライトさせることが出来るのか?
そのあたりの点を、日本の航空法が重視している「安全」という観点を併せてお話ししていきたいと思います
Skydio R1てどんなドローンなの?
本題に入る前にまず「Skydio R1」とはどのようなドローンなのかをご紹介したいと思います
画像出典:Skydio
R1は人間が操作するのではなく、ドローン自身が状況に合わせて飛行する「自律飛行」に特化したドローンです
13基のカメラを搭載し3Dマッピングによって周囲の状況を素早く正確に判断し、安全な自律飛行が可能であるとしています。それを支えているのが、R1が採用しているNvidia製JetsonというSoCです
こちらのSoCはCPUと別にGPU(256コア)を搭載しているため、画像解析のような高度な処理もスムーズに行えるものになっています
これによってプロカメラマンが映画で用いるような撮影技法をいとも簡単に数タップで行うことが出来るというのが最大の特長となっています
余談ですがその他のスペックは以下
- 飛行可能時間:16分
- 動画:4K 30P / フルHD 60P
- センサーサイズ:1/2.3インチ
- 視野角:150°
- ジンバル:2軸 + フライトコントロール1軸
Apple Watchからの操作は?
画像出典:Apple
Skydio R1がApple Watchから何を操作するのかというと、ざっくり言ってしまえば飛行モードの切り替えを行うような操作ということになります
前述の通りR1は自律飛行をするのが前提のドローンであるので、アプリで行う操作は飛行モードの切り替えが主となります
例えばスノーボーダーが自分を追尾させるような撮影を行っていたとして、次はドローンに自分の前に回り込んで欲しくなったとします。その際にいちいちスマホを取り出して操作するには、滑降を一度ストップしないといけませんよね? ところがApple Watchから操作が可能となることで、滑りを止めることなくスマートに操作が行える――そんなシーンを想定しているようです
ちなみに今回SkydioがリリースしたWatch OS用のアプリは、Apple Watchのバージョン問わず使用が可能ですが、スペック的には第2世代以降で使用してほしいということも公表されています
日本の航空法の考え方とSkydio R1
もしかしたら「面白そう、欲しいなぁ」と思った方もいるのではないかと思いますが、それでは仮にR1が日本で発売されたとしてこの製品を楽しむことが出来るのでしょうか?
結論から言ってしまうと、問題あるけど問題ありません
「何それ?」って感じですが、ここは日本の法整備が技術の進歩に追い付いていない部分になります。航空法では基本的にはプロポでの操縦がきちんと行えること、という基準を設けています。ところがドローンの世界の技術は日進月歩で、プロポを用いない操縦はおろか、ジェスチャーで操作可能なドローンも登場しています。代表的なのはDJI Sparkですね
これらプロポを用いないドローンに対して国交省航空局が許可・承認を与えているかというと……与えています
つまり、プロポを用いないドローンでもいいよという解釈をしているわけですね
で、今回のApple Watchで操作してフライトさせる場合というのは主に「目視外飛行」にあたるかと思いますが、こちらには追加基準が設けられています
- 自動操縦システムを装備し、機体に設置されたカメラ等により機体の外の様子を監視できること
- 地上において、無人航空機の位置及び異常の有無を把握できること(不具合発生時に不時着した場合を含む。)。
- 電波断絶等の不具合発生時に危機回避機能(自動帰還機能、電波が復帰するまで空中で位置を維持する機能等のフェールセーフ機能)が正常に作動すること。
これらを満たせばOKということになっています。R1は問題なく監視・設定が行えますので航空法上は「飛ばせます」ということになります
なのですが、ドローンスクール講師の立場から言わせてもらうと、こうした飛ばし方は問題があると感じます
たぶんどのドローンスクールさんでも同じだと思うのですが、我々は常に「安全運航」を意識して飛ばして下さいということを伝えます。それは自動航行中でも一緒で、基本的にドローンから目は離さないように、もし離す場合でもプロポは常に構え、いつでも操作に介入できるようにして飛ばしてもらうようにしています
どれだけドローンの性能が上がろうと機能が充実しようと、空を飛んでいるものはそれだけリスクですしいつかは必ず落ちるものです。そのことを念頭に置いた「かもしれないフライト」を行っていただくことが重要だと考えていますので、そういう意味ではSkydio R1が掲げる運用方法はあまり好ましいものではないと言えます
これが冒頭で「問題あるけど問題ない」と言った理由になります
現時点のの航空法的には問題無いんだけど、航空法のそもそもの理念である「安全」や、ドローンパイロットに持っていてほしいリスク管理・KYの考え方からは外れているというものですので、ちょっと難しい製品なのかなと思います
技術の進歩は嬉しいですし、それを阻害しないように活用していきたいのは当然ですが、まずは安全あってこそですよね
ちなみに、仮にR1が日本で発売されたとしても当面は「資料の一部を省略可能な機体」には載らないと思いますので、それまでは自力での説明が必要ですし、場合によっては審査に蹴られる可能性もあると思います
それからR1は輸入すれば現在でも入手可能ですが、技適を取得していないので日本で飛ばすと電波法違反になります。技適を取得した日本公式版が出るまでは我慢しましょう
今後も様々なドローンが登場してくると思います。すぐに出そうで面白そうなのはMRで操縦できるドローンでしょうか
どんなドローンが出てきても、そしてそれが許可・承認申請したら通ったとしても、航空法はそもそも「安全運用において必要なリスクレベルを線引きしたもの」であることを念頭に置いて、一人ひとりが十分に注意しながらフライトさせるようにしないといけませんね