DJIフライトシミュレーターについて

DJI フライトシミュレーター
画像出典:DJI

これまでドローンのフライトシミュレーターはいくつかあり、当校でも訓練の一環として使用してきました
メーカーがドローンに付帯して提供しているシミュレーターもあれば、独自にリリースされているシミュレーターもあります。当校で使用しているのは「RealFlight」ですが、他にも「Phoenix」や「Heli-X」が有名でしょうか。筆者はレーサー機用として「Liftoff」も使用しています

これらのシミュレーターはそれなりの完成度を持っているものの、やはりどうしても「ゲーム感」が拭えない部分があるというのが正直なところです。上記の中では最もリアルな感覚に近いということで「RealFlight」を使っていますが、それにしてもゲーム感があります

ところがこの度登場したDJI製のフライトシミュレーター、その名も「DJIフライトシミュレーター」であれば、実在するモデルを使って、より現実に近い訓練が行えると注目を集めています

非常に有用な製品だと思いますので、これから何度かに分けて使い方などをご紹介していきたいと思いますが、第1回目となる今回は製品の基本的なご紹介と、必要環境等を解説していきたいと思います
今後の更新と併せて注目していただければと思います

DJI フライトシミュレーターとは

DJIからリリースされている「DJI フライトシミュレーター」は、プロのパイロットを育成することを目的としてリリースされたDJI製ドローンのリアルシミュレーターとなっています
製品の特長は以下の通りで

  • 実際のDJI製ドローンを使える
  • DJI製の実機プロポを使える
  • 実際の運用状況をシミュレートできる
  • 操縦モードの切り替えも可能
  • 物理演算による周辺環境(風など)からの影響をリアルに再現できる
  • 墜落シミュレーションができる

といったように、現実世界で飛ばすための練習を行うことを最大の強みとして開発されました
本物と同じ機体を使うことが出来るうえ、プロポ自体も実機のものを使えるわけですから練習として十分な効果があることは想像に難くないのではないでしょうか

「RealFlight」でも風の影響はシミュレートできましたが、DJI フライトシミュレーターが優れているのは「地形の影響」までシミュレートできる点です。最も分かりやすいところでは「地面効果」。これは、低高度を飛行するドローンのダウンウォッシュ(吹きおろし)が地面にぶつかることで、一時的に揚力が増す現象です。ドローンがバランスを崩す一因となっていますが、このあたりもリアルに再現されています

また、これは独自機能というわけではありませんが「墜落シミュレーション」機能が付いている点も大きいです。ドローンパイロットとして、不測の事態、ノーコントロールになってしまった際や、墜落を開始してから地面にぶつかるまでの猶予時間などを実際に体験しておくことはとても意義のあることです。こればかりは実機で体験するのはなかなか難しい点でありますので、こうした機能が備わっていることはとても重要だと言えます

使用可能なドローンは?

このシミュレーターは主要なDJIドローンを網羅していますが、バージョンによって違いがあります
DJI フライトシミュレーターは3つのエディションが用意されています

  • 無料トライアル版
  • エンタープライズ版
  • カスタマイズ版

の3つです。名前から分かる通り、トライアル版以外は有料となります。無料版に収録されているドローンは以下

  • Spark
  • Mavic Pro
  • Mavic Air
  • Mavic 2 Zoom
  • Phantom 4 Pro
  • Inspire 1 Pro

となっており、エンタープライズ版とカスタマイズ版は上記に加えて

  • Mavic 2 Enterprise
  • Inspire 2
  • Matrice 210 RTK

も使用可能となります
Matrice 600シリーズが使えないのは少々残念ですが、それでも現状運用されているほぼ全ての機種がシミュレーターで体験できるというのは嬉しいですね

DJIフライトシミュレーターの使用に必要な環境

これだけ充実した内容のシミュレーターが無料から用意されているとは至れり尽くせりですが、それでは誰でも利用できるのかというとそういうわけでもありません
このシミュレーターを使用するためには以下のものが必要となります

  • DJI製の送信機(プロポ)
  • GTX1050Ti以上のグラフィックボードを搭載したWindows10パソコン

人を選ぶポイントは2つ目の「GTX1050Ti以上のグラボ~」という点かと思います。一般的なパソコンではまず搭載されておらず、ゲーマーや映像編集等を行っている方でないと持っていないパソコンであると思います
さらにその他の要件を書いておきますと

  • CPU:Pentium G4560以上
  • VRAM:4GB以上
  • メモリ:16GB以上
  • ストレージ:80GB以上

となっております。これは「最低条件」で、起動は出来るけど快適には動かないレベルです。かなりハードルは高いです。一般的なノートPCでは動きません
普通に動かすための要件はこちら

  • CPU:Core i5 6400以上
  • GPU:GTX1060 or GTX1070
  • VRAM:6GB or 8GB
  • メモリ:16GB以上
  • ストレージ:SSD推奨

となります。完全にゲーミングPCです。GTX1060を搭載していても、3GB版だと要件を満たせないところも厳しいです。これですら「推奨環境」であり、満足に動かすための要求スペックは第7世代i7、GTX1080ti、メモリ32GBと、さらに高いものとなっている点もツライところです……
※ちなみにCPUは全てデスクトップ版が求められていますので、ノートPCに採用されている低電力版のi5やi7は、例え第8世代であっても要件を満たせていませんので注意して下さい

 

ということで、このシミュレーターを使うためには別途PCを用意しないといけない人が大半だと思いますが、そこさえクリアできれば無料からこれだけのシミュレーターを使うことが出来ますので一考の価値ありだと思います

次回はソフトの入手法やインストール方法、起動方法などを解説していく予定ですので引き続きご覧いただければと思います

関連サイト

DJI公式サイト:https://www.dji.com/jp
DJI フライトシミュレーター 製品ページ:https://www.dji.com/jp/simulator